2026.07.24
耐震基準を満たしていない建物とは?確認方法やリスク・すべき対策
「自分の住んでいる建物は地震に耐えられるのだろうか」と不安を感じたことはありませんか。日本では建築基準法に基づく耐震基準が段階的に改正されてきましたが、古い基準で建てられた建物のなかには、現行の耐震基準を満たしていないものも一定数存在します。
今回の記事では、耐震基準の概要や、基準を満たしていない建物の特徴・確認方法、対策をしない場合のリスク、そして具体的な対策方法までを解説します。ご自宅や所有する建物の耐震性が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
耐震基準とは?
それでは、まず耐震基準の基本的な知識について解説します。耐震基準とは、建築基準法によって定められた、建物が地震に対して安全であるために満たすべき構造上の基準です。
日本では大きな地震被害を教訓として耐震基準が段階的に改正されてきており、現在は「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準」(2000年6月1日施行の建築基準法改正) の3つに大別されます。
旧耐震基準
旧耐震基準は、1981年5月31日以前の建築確認に適用されていた耐震基準です。「震度5程度の中規模地震で大きな損傷を受けないこと」を想定して設計されており、震度6以上の大規模地震に対する明確な基準は設けられていませんでした。
1978年の宮城県沖地震で多くの建物が被害を受けたことを契機に、耐震基準の抜本的な見直しが行われ、1981年6月に新耐震基準が施行されました。そのため、旧耐震基準で建てられた建物は、現在の基準と比べると耐震性能が不十分である可能性が高く、大規模地震の際に倒壊や大きな損傷を受けるリスクが指摘されています。
新耐震基準
新耐震基準は、1981年6月1日以降の建築確認に適用されている耐震基準です。旧耐震基準が中規模地震への対応にとどまっていたのに対し、新耐震基準では「震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しないこと」が求められるようになりました。
この基準の導入後に建てられた建物は、1995年の阪神・淡路大震災においても旧耐震基準の建物と比べて倒壊率は大幅に低かったことが確認されており、耐震基準の改正が実際の被害軽減に効果があったことが実証されています。
現在でも多くの建物に適用されている基本的な耐震基準であり、中古住宅の売買や耐震性能の評価においても、新耐震基準を満たしているかどうかがひとつの重要な判断基準となっています。
2000年基準
2000年基準は、2000年6月1日に施行された建築基準法の改正により追加された基準で、主に木造住宅の耐震性能をさらに強化する内容となっています。新耐震基準をベースとしつつ、地盤の状況に応じた基礎設計が求められるようになり、耐力壁の配置バランスの規定、柱や梁の接合部における金物の使用基準などが新たに定められました。
阪神・淡路大震災では新耐震基準の木造住宅でも被害が発生したケースがあり、その原因として接合部の強度不足や耐力壁の偏りが指摘されました。2000年基準はそうした教訓を踏まえて設けられたもので、木造住宅の耐震性をより確実なものにするための重要な基準です。
1981年以降に建てられた建物であっても、2000年6月1日以前の木造住宅は2000年基準を満たしていない可能性があるため、注意が必要です。木造住宅にお住まいの方は、建築時期が新耐震基準の範囲内であっても、2000年基準に照らして十分な耐震性能が確保されているかどうかをあわせて確認しておくことをおすすめします。
耐震等級とは?
耐震基準とあわせて知っておきたいのが「耐震等級」です。耐震等級とは、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく住宅性能表示制度のなかで定められた、建物の耐震性能を示す指標です。
耐震等級は1〜3の3段階で評価されます。耐震等級1は建築基準法で求められる最低限の耐震性能を満たしているレベルで、震度6強〜7程度の地震でも倒壊しない程度の強度を有しています。耐震等級2は等級1の1.25倍の耐震性能を持ち、学校や病院など避難所となる建物に求められる水準です。耐震等級3は等級1の1.5倍の耐震性能で、防災拠点として使用される建物に相当する高い耐震性能となっています。
耐震等級の取得は任意ですが、等級が高いほど地震保険の割引率が大きくなるなどのメリットがあります。新築住宅を建てる際や中古住宅を購入する際には、耐震基準だけでなく耐震等級も確認しておくと、建物の耐震性能をより正確に把握することができるでしょう。
耐震基準を満たしていない建物のリスク

耐震基準を満たしていない建物のリスクとして以下のことが挙げられます。
地震による倒壊・損壊のリスク
最も大きなリスクが、地震発生時の倒壊や大規模な損壊です。旧耐震基準で建てられた建物は、震度6強〜7クラスの大規模地震を想定した設計がされていないため、強い揺れに耐えきれず倒壊や大きな損傷を受けるリスクがあります。
倒壊は居住者の生命に直結する問題であるだけでなく、近隣の建物や道路をふさいで避難経路を遮断するなど、周囲にも大きな影響を及ぼす可能性があります。また、倒壊には至らなくても、柱や壁のひび割れ、基礎部分の損傷などによって建物の安全性が大きく損なわれ、地震後に住み続けることが困難になるケースも少なくありません。
二次災害のリスク
地震の揺れそのものによる被害だけでなく、二次災害のリスクも高まります。地震によって建物の構造が損傷すると、ガス管や電気配線が破損し、ガス漏れや漏電による火災が発生する危険性があり、一度火災が発生すると周辺地域にまで被害が拡大するおそれがあります。室内においても、天井材の落下や家具・家電の転倒によるけがのリスクが高まるでしょう。
さらに、建物が大きな損傷を受けた場合、修繕や建て替えには長い期間と多額の費用がかかるため、生活再建が長期化することも深刻な問題です。仮設住宅や賃貸住宅での避難生活が長引くことで、経済的な負担はもちろん、精神的なストレスや生活環境の変化による健康面への影響も懸念されます。
資産価値への影響
耐震基準を満たしていない建物は、不動産としての資産価値にも影響を及ぼします。近年では中古住宅の売買においても耐震性能への関心が高まっており、旧耐震基準の建物は買い手がつきにくかったり、売却価格が大幅に下がったりする傾向があります。
また、耐震基準を満たしていない建物は、住宅ローンの審査で不利になるケースや、地震保険の耐震性に関する割引を受けられない場合があります。将来的な売却や賃貸運用を考えている場合は、早めに耐震性能を確認し、必要に応じた対策を講じておくことが重要です。
耐震基準を満たしているかを確認する方法

ご自宅や所有する建物が耐震基準を満たしているかどうかを確認するには、主に以下の方法があります。
建築年数・確認申請書類で確認する
最も簡単な確認方法は、建物の建築時期を調べることです。1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物であれば新耐震基準、2000年6月1日以降であれば2000年基準が適用されています。それ以前の建物は旧耐震基準で建てられている可能性が高いといえます。
ここで注意したいのは、確認すべきなのは「建物の完成時期」ではなく、原則として「建築確認を受けた日」であるという点です。建物の完成が1981年6月以降であっても、建築確認の申請が同年5月以前に行われていれば旧耐震基準が適用されています。
建築確認の時期は、建築確認済証や検査済証で確認できます。それらの書類が手元にない場合は、建物が所在する自治体の建築指導課などに問い合わせることで確認できることもあります。
また、登記簿謄本に記載されている「新築年月日」からもおおよその目安をつけることが可能です。ただし、登記上の日付と建築確認の日付にはずれが生じることもあるため、正確に判断したい場合は確認済証の確認が望ましいでしょう。
耐震診断を受ける
建築時期だけでは建物の実際の耐震性能を正確に判断することはできません。経年劣化や増改築の影響、地盤の状態なども耐震性に関わるため、より正確な評価を得るには専門家による耐震診断を受けることをおすすめします。
耐震診断では、建築士などの専門家が建物の構造や壁の配置、基礎の状態、劣化の程度などを調査し、現行の耐震基準に対してどの程度の耐震性能を有しているかを数値で評価します。診断の結果、耐震性能が不足していると判定された場合は、具体的な補強計画の提案を受けることもできます。
診断にかかる時間は建物の規模や構造によって異なりますが、一般的な木造住宅であれば現地調査は半日程度で終わるケースも多く、日常生活に大きな支障をきたすことなく受けられます。
耐震基準を満たしていない建物ですべき対策

耐震診断の結果、耐震性能が不足していると判断された場合は、早めに適切な対策を講じることが重要です。
ここでは、耐震基準を満たしていない建物で行うべき主な対策方法を紹介します。
耐震補強工事
耐震補強工事は、建物の構造そのものを強化して地震に対する耐力を高める方法です。具体的には、壁の増設や筋交いの追加、基礎の補強、柱と梁の接合部の金物補強、屋根の軽量化など、建物の弱点に応じたさまざまな工法が用いられます。
木造住宅の場合は、耐力壁の追加や基礎のコンクリート補強が代表的な施工内容です。鉄筋コンクリート造の建物では、鉄骨ブレースの設置や壁の増打ち、柱への炭素繊維シート巻き付けなどの方法が採用されるケースがあります。
なお、耐震補強工事は建物の内部や外部に手を加えるため、工事期間中は生活に一定の影響が生じる場合があります。工事の規模によっては一時的な仮住まいが必要になることもあるため、事前に施工業者と工期やスケジュールについてしっかり打ち合わせておくことが大切です。
制震ダンパー・免震装置の設置
耐震補強に加え、制震ダンパーや免震装置を設置するという選択肢もあります。どの対策が最適かは、建物の構造や状態、予算、求める性能によって異なるため、耐震診断の結果をもとに専門家と相談しながら判断することが大切です。
制震ダンパーとは?
制震ダンパーとは、建物の内部にダンパーなどの装置を設置し、地震のエネルギーを吸収・減衰させることで建物の揺れを軽減する仕組みです。建物の構造自体を大きく変えることなく設置できるケースもあり、耐震補強工事と組み合わせることで、より高い地震対策効果が期待できます。
制震ダンパーの大きな特徴は、繰り返しの揺れに対しても安定した効果を発揮する点です。大地震の後に続く余震にも対応できるため、本震だけでなく余震による建物へのダメージの蓄積を抑えることができます。
ダンパーの種類もオイルダンパー、ゴムダンパー、粘弾性ダンパーなどさまざまで、建物の構造や設置条件に応じて最適なタイプを選定できます。住宅向けの製品も多く開発されており、比較的導入しやすい対策方法のひとつです。
免震装置とは?
免震装置とは、建物の基礎部分に特殊な積層ゴムやすべり支承などを設置し、地震の揺れが建物に直接伝わるのを抑える仕組みです。地震の力を建物に伝えないという考え方に基づいており、建物全体の揺れを大幅に低減できるため、建物の損傷防止だけでなく、室内の家具や設備の転倒防止にも高い効果を発揮します。
ただし、免震装置は導入費用が高額になる傾向があり、既存の建物に後から設置するには基礎部分の大規模な工事が必要となります。そのため、主にマンションやオフィスビルなどの大規模建築物の新築時に採用されるケースが多く、一般的な木造住宅への導入は現実的に難しい場合があります。
既存住宅の地震対策としては、耐震補強工事と制震ダンパーの組み合わせが現実的な選択肢となるでしょう。
耐震補強にかかる費用

耐震補強を検討するうえで費用面が気になる方も多いでしょう。費用相場と活用できる補助金制度について解説します。
耐震補強工事の費用相場
耐震補強工事の費用は、建物の構造や規模、劣化の程度、施工内容によって大きく異なります。一般的な木造住宅の場合、おおよそ100万円〜300万円程度が目安といえますが、建物の状態や補強箇所の数によってはそれを上回るケースもあります。
費用に影響する主な要素としては、耐震診断で判定された耐震性能の不足度合い、補強が必要な箇所の数と範囲、基礎部分の補強の有無、屋根の軽量化の要否などが挙げられます。また、工事に伴う内装の復旧費用や、工事期間中の仮住まい費用が別途発生する場合もあるため、見積もりの段階でトータルコストを確認しておくことが大切です。
費用を把握するためには、複数の業者から見積もりを取り、工事内容や費用の内訳を比較検討するようにしましょう。耐震補強の実績が豊富な業者に依頼することで、適切な工法の提案と適正な価格での施工が期待できます。
国・自治体の補助金・助成金制度について
耐震補強工事にかかる費用の負担を軽減するために、国や自治体ではさまざまな補助金・助成金制度を設けています。国の制度としては、耐震改修促進法に基づく支援のほか、住宅リフォームに関する税制優遇措置として、耐震改修を行った場合の所得税控除や固定資産税の減額措置などが用意されています。
自治体の制度は地域によって内容が異なりますが、補助金額は数十万円から100万円を超えるケースもあり、うまく活用すれば自己負担を大幅に抑えることが可能です。ただし、補助金制度には予算枠や申請期限が設けられているのが一般的で、予算上限に達した時点で受付が終了となるケースもあります。
また、工事着工前の申請が条件となっている場合がほとんどのため、工事を始める前に必ず申請手続きを済ませておく必要があります。
お住まいの自治体のホームページや担当窓口で最新の制度内容を確認し、早めに準備を進めることをおすすめします。
耐震基準を満たしていない建物への対策は重要
今回は、耐震基準の概要や基準を満たしていない建物のリスク、確認方法、具体的な対策などを解説しました。旧耐震基準で建てられた建物は、大規模地震で倒壊するリスクが高く、資産価値にも影響を及ぼします。
まずは建築時期の確認や耐震診断を通じて現状を把握し、必要に応じて耐震補強や制震ダンパーの導入といった対策を早めに講じることが大切です。
なお、住宅の地震対策を強化したいとお考えの場合には、ぜひアイディールブレーンの製品の活用をご検討ください。
住宅向けの「制震テープ」「ミューダム」「ディーエスダンパー」や、家具・家電の転倒を防ぐ「ガムロック」など、家庭に導入しやすい地震対策製品を幅広く提供しています。
ご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。




