特集 2025.10.31

南海トラフ地震とは?発生メカニズム・被害想定などをわかりやすく解説

南海トラフ地震とは?発生メカニズム・被害想定などをわかりやすく解説

日本列島に甚大な被害をもたらすとされている大規模地震の一つ「南海トラフ地震」。静岡県沖から九州沖にかけて延びる海溝域で発生する地震であり、歴史的にも繰り返し発生してきました。

今後30年以内に高い確率で発生すると予想され、揺れや津波による甚大な被害が想定されています。

今回の記事では、南海トラフ地震の発生メカニズムや過去の発生事例、被害想定、そして私たちにできる備えについて、わかりやすく解説します。

南海トラフ地震とは?

駿河湾から日向灘沖にかけて広がるプレート境界を震源域として発生する大規模地震の総称です。この地域はフィリピン海プレートとユーラシアプレートがぶつかり合う境界にあたり、プレート同士の歪みが長い年月をかけて蓄積され、その解放によって巨大地震が起こると考えられています。

国の地震調査委員会は、今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率はおよそ60〜90%程度以上(または20〜50%)としており、切迫性の高い地震として注目されています。その発生確率は、過去にほぼ一定の周期で繰り返し地震が起きてきたという事実に基づいており、社会全体としても防災対策を進める必要性が示されています。

なお、南海トラフ地震は一つの呼び名で包括されるものの、震源の位置によって呼称が分かれています。震源域の南側、四国から紀伊半島沖にかけて発生したものを「南海地震」、静岡県沖で起こった場合は「東海地震」、その中間にあたる地域で起きた場合は「東南海地震」と呼ばれます。

それらの地震は単独で発生することもあれば、隣接する震源域が連動して発生するケースもあり、その場合には被害規模がさらに大きくなります。

このように南海トラフ地震は、発生域の広さと連動性の高さから、社会基盤や人々の生活に深刻な影響を及ぼす可能性のある極めて重要な災害リスクとされているのです。

発生メカニズム

地球の表面は硬いプレートで覆われていますが、その下には高温による対流が存在し、プレートは常に動き続けています。日本付近では、北米・ユーラシア・太平洋・フィリピン海の4つのプレートが複雑にぶつかり合い、年間数cmの速さで動いています。

南海トラフ地震に関連するのは先述した通りフィリピン海プレートとユーラシアプレートです。フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む際、上にあるユーラシアプレートの端が強く引き込まれて歪みが蓄積されていきます。その歪みが限界に達したとき、ユーラシアプレートは跳ね上がり、膨大なエネルギーが放出されて地震が発生するのです。

プレートの跳ね上がりによって海水も動くため、津波も発生します。南海トラフ地震はそうしたプレート運動に起因する「海溝型地震」です。

参考:南海トラフ地震のメカニズム

過去の歴史

南海トラフで過去に発生した地震を「古代」「近世」「近代~現代」に分けて解説します。

古代

最も古い記録は684年の白鳳地震(南海地震)で、震源域は足摺岬沖から潮岬沖にかけての領域と推定されています。その地震は強い揺れと津波を伴い、沿岸部では社殿や建物の倒壊が相次いだという記録が残っています。

続く887年仁和地震(南海地震)では、京都の寺社に甚大な被害が出て、摂津の国(現在の大阪北西部・兵庫南東部)では津波による被害も大きかったとされています。

中世

1096年永長東海地震と1099年康和南海地震はわずか2年余りの間隔で発生し、駿河や伊勢では津波で社殿や民家が流出。康和地震では土佐で広範囲が沈降したという記録も残っています。

さらに1361年正平地震では阿波の由岐集落が津波で壊滅的な被害を受け、京都や奈良でも寺院が大きな被害を受け、畿内から四国に至るまで広い範囲で被害が発生したという記録が残っています。

近世

1498年明応地震では、駿河から伊勢湾にかけて大津波が押し寄せ、多くの溺死者が出たという記録が残っています。

1605年慶長地震は、揺れが比較的弱かったのに対し津波の被害が極端に大きい「津波地震」で、伊豆から九州に至る太平洋沿岸で津波被害が発生したとされています。

1707年宝永地震は、推定マグニチュード8.6の巨大地震で、南海・東海両地域に大きな被害をもたらしたと記録されています。津波の被害は広範囲に及び、さらに1か月半後には富士山の宝永噴火が発生し、広範囲に火山灰が降り積もったとされています。

1854年安政地震では、12月23日に東海地震、24日に南海地震が立て続けに発生。30時間程度という短い間隔で発生し、房総から四国にかけて津波が押し寄せたとされています。

近代~現代

幕末以降、しばらく巨大地震発生の記録はありませんが、20世紀に入って再び大規模な地震が起きています。1944年昭和東南海地震(推定M7.9)では、静岡・愛知・岐阜・三重を中心に大きな被害が生じ、三重県や和歌山県では津波が6~10m。死者は998人、家屋の全壊は約2万6000棟に及んだとされています。

その2年後、1946年には昭和南海地震(M8.0)が発生し、四国や紀伊半島南部を中心に津波が襲い、死者1330人、流失家屋約1450棟。両地震は2年差で発生し、南海トラフ地震の連動性を示しています。

以上のように南海トラフでは、およそ100~150年周期でマグニチュード8クラスの巨大地震が繰り返されてきた歴史があります。それらは単なる局地的な地震ではなく、津波、地殻変動、さらには火山噴火を誘発する場合もあり、日本列島の広範囲に甚大な影響を及ぼしてきました。

1946年からすでに70年以上が経過しており、次の発生が切迫していることがわかるでしょう。

参考:南海トラフで過去に発生した大規模地震について

南海トラフ地震の被害想定

南海トラフ地震の被害想定

南海トラフ地震が発生した場合、全国的に甚大な被害をもたらすと考えられています。

ここでは、政府が発表している南海トラフ地震の被害想定を「建物被害」「人的被害」「ライフライン被害」「生活への影響」に分けて紹介します。

建物被害

政府の推計によれば、最大クラスの地震では建物被害が全国で数百万棟規模にのぼるとされています。

震度6弱以上の強い揺れに見舞われた場合、全壊する建物は約61万棟から約127.9万棟に達し、さらに約102.8万棟から197.4万棟が半壊すると想定されています。

また、地盤が軟弱で揺れが増幅されやすい地域では、杭基礎を有する建物でも損傷が生じる可能性があるとされています。半壊や一部損壊にとどまった建物も、後発地震や余震によって被害が拡大し、居住や事業の継続が困難になるケースもあるでしょう。

地盤が緩み、建物が沈下・傾斜する液状化による被害も想定されています。木造住宅を中心に、約9.4万棟から11万棟が全壊、約48.1万棟から53万棟が半壊するとされ、生活基盤に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

津波による被害

浸水域に入る建物は甚大な被害を受け、約16.1万棟から約20.8万棟が全壊、さらに約23.6万棟から33.1万棟が半壊すると試算されています。木造住宅は津波によって建物ごと流されやすく、人口が密集する地域では漂流物同士の衝突や建物の転倒により、被害の拡大が懸念されています。

また、津波による直接の浸水被害に加え、津波火災という二次災害も想定されています。津波によって運ばれたがれきや車両、ガスボンベなどが火源となり、300件から400件規模の津波火災が発生すると考えられています。

人的被害

人的被害においては、建物倒壊による死者は約1.7万人から7.3万人にのぼり、特に深夜の発生時には就寝中の人々が下敷きとなるケースが多いことから被害が大きくなると想定されています。老朽化した木造住宅のみならず、非木造のビルやマンションでの中間階の圧潰による死傷者の発生も想定されており、高層オフィスビルやマンションでは滞留人数が多いため被害が集中する恐れがあるでしょう。

さらに、津波による被害は極めて深刻で、約9.7万人から21.5万人が死亡、避難中に津波に飲まれる、自動車や列車が津波に巻き込まれるといったケースに加え、夏季であれば海水浴客の被災も想定されています。

火災による死者は約1,400人から2.1万人、避難所や地下街で煙に巻かれるケースや、津波火災で避難ビルが延焼するケースも想定されています。加えて、ブロック塀や自動販売機の転倒、屋外落下物によって最大700人程度が命を落とす可能性があるともされ、屋内での家具の転倒やガラスの飛散などで約1,300人から5,300人の死者が出るとも試算されているのです。

ライフライン被害

水道・電力・通信など社会基盤の機能不全も想定されています。まず上水道は、管路や浄水場の損壊や浸水により、東海三県で7~8割、近畿三府県、山陽三県で4~6割、四国で7~9割、九州二県で9割が断水。耐震化が進んでいない導水管や送水管、浄水場等を中心に甚大な被害が発生し、停電によって稼働を継続できない浄水場が多発すると考えられています。

下水道も同様に、東海・近畿・四国・九州の約9割で処理が困難となり、多くの処理場は津波浸水や停電で機能停止に追い込まれることが想定されています。

電力については、震度6弱以上の揺れの発生や津波浸水を受けた火力発電所が停止し、供給力は西日本全体で平時の約5割に低下すると見込まれています。津波による港湾被害で燃料輸送が滞ることがあれば稼働再開は遅れるでしょう。停電は東海・近畿・四国・九州の約9割で発生すると考えられており、復旧には長期間を要する可能性があります。

さらに通信においては、固定電話は震度6弱以上の地域や津波浸水域でほぼ利用不能となり、携帯電話も固定回線依存のため多くの基地局が停止。通話は最大90%規制がかかり、通信が著しく制限されることが想定されています。

生活への影響

都市部では、公共交通機関の停止により帰宅困難者が数百万人規模で発生すると想定されています。例えば平日の正午に発生した場合、中京都市圏で約410万人、京阪神都市圏で約660万人が滞留すると試算されています。

夜間は信号停止による交通混乱が加わり、徒歩帰宅を試みる人々と車両が交錯して深刻な渋滞や事故が発生することも考えられます。通信障害によって安否確認が困難になることも、人々の不安と混乱を増幅させるでしょう。一時滞在施設の不足や避難所の混乱も予想されています。

物資に関しては、被災地内外での物流が停滞することで、食料は3日間で約700万~2,000万食分、飲料水は約1,700万~4,400万リットル、毛布も約300万枚~620万枚不足すると想定されています。住居はあっても生活必需品等が不足する、いわゆる在宅避難者が多く発生する可能性があるのです。

参考:南海トラフ巨大地震最大クラス地震における被害想定について【定量的な被害量】

南海トラフ巨大地震最大クラス地震における被害想定について【被害の様相】

南海トラフ地震への備え

南海トラフ地震への備え

日頃の小さな備えが、いざという時に家族や仲間の命を守る力になります。

ここでは、個人として取り組むべきことと、地域・企業に求められる対策について解説します。

個人でできること

家具や家電の固定は地震による転倒や下敷きになる事故を防ぐ基本的な対策です。特にタンスや本棚、冷蔵庫などの大型家具は必ず固定し、避難経路を塞ぐことにならないよう配置にも注意が必要です。また、非常用持ち出し袋の準備も欠かせません。食料や飲料水、懐中電灯、モバイルバッテリー、常備薬などを最低3日分、可能であれば1週間分用意しておくことが望ましいでしょう。

家族で避難場所や連絡手段を確認し合うことも重要です。大規模災害時には通信が途絶する可能性があるため、災害用伝言ダイヤルやSNSの活用方法を共有しておくと安心です。加えて、地域のハザードマップを確認し、津波や液状化の危険があるエリアに住んでいる場合は、避難ルートや避難場所を家族で事前に確認しておきましょう。

また、定期的に備蓄品の賞味期限やバッテリー残量を確認・更新し、常に使用可能な状態を維持することも忘れてはなりません。そうした小さな備えが、災害時に家族の命と生活を守る大きな力となります。

地域・企業で取り組むべきこと

地域レベルでは、定期的な避難訓練や防災教育を実施することが重要です。また、自治会や町内会などのネットワークを活かし、高齢者や障がい者など災害時に支援を必要とする人々を事前に把握して助け合う体制を築く必要があります。

さらに、道路や橋梁、上下水道といったインフラの耐震化を進めるとともに、地域単位で食料や水、医薬品などの備蓄を強化しておくことが求められます。

企業においては、災害時でも事業を継続できるようにBCP(事業継続計画)を策定し、代替拠点や業務の優先順位を明確にしておくことが重要です。その上で、建物や設備の耐震化や非常用発電機の設置、通信や物流のバックアップ体制を整えるなど、ハードとソフトの両面での対策を進める必要があります。

地震が発生した際に取るべき行動

地震が発生した際に取るべき行動

最後に、実際に地震が発生した際に命を守るための行動を確認しておきましょう。

室内にいる場合

強い揺れを感じたら、まずは身の安全を最優先に行動します。机やテーブルの下に入り、頭や首を守りながら揺れが収まるのを待ちます。慌てて外へ飛び出すと、ガラスの落下物や倒壊物に巻き込まれる危険があるため避けましょう。火を使っている場合は揺れが収まってから火元を確認し、初期消火が可能な範囲で対応します。また、ドアや窓を開けて避難経路を確保しておくことも重要です。

屋外にいる場合

ビル街や繁華街などでは、看板やガラスの落下に注意し、バッグや腕で頭を守りながら揺れが収まるまで建物から離れましょう。海辺では津波の危険があるため、揺れが収まったらすぐに高台へ避難します。

山間部や斜面では、落石や土砂崩れのリスクが高まるため、できるだけ安全な広い場所へ移動しましょう。交通機関を利用中の場合は、係員の指示に従い冷静に行動することが求められます。

南海トラフ地震に備えるために

南海トラフ地震は、極めて切迫性が高く、今後30年以内に発生する確率が高いとされています。想定される被害は多岐にわたり、私たち一人ひとりが防災意識を高め、事前の備えを徹底することが重要です。国や地域、企業、家庭、個人が一体となって対策に取り組むことが、被害を最小限に抑えるために欠かせないことです。

なお、アイディールブレーン では、家具・家電の転倒を防ぐ「ガムロック」、住宅の揺れを軽減する「制震テープ」「ミューダム」「ディーエスダンパー」など、多彩な地震対策製品を取り揃えております。

防災の備えは、一人の意識から広がる地域の安心につながります。
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