日本は地震大国と呼ばれるほど地震が多発する場所であり、過去にも数々の大地震が人々の生活に大きな影響を与えてきました。近年では、様々な大規模地震の発生が予想されており、その被害規模や影響が注目されています。
それらの地震が発生した場合、建物の倒壊や津波による被害、ライフラインの停止など、社会全体に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。
この記事では、そもそも地震の予測・予知は可能なのかということや、発生が予想されている大地震について、その概要や被害想定、そして私たちが事前に備えておくべき対策について解説します。
地震への備えを見直したい方や、自分や家族を守るための知識を深めたい方はぜひご覧ください。
地震の予測・予知は可能?
「現在の科学で地震の予測・予知は可能なのか?」という疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
地震の予測や予知については、現時点の科学的知見では難しいといえます。地震予知とは、地震が発生する「時」「場所」「大きさ」を高い精度で特定して伝えることを指しますが、これを正確に行う技術は未だ確立されていません。
例えば、「一年以内に日本の内陸部でマグニチュード5の地震が発生する」といった曖昧な予測や、日常的に起きている小さな地震を予測することは可能ですが、実用的な価値は乏しいと考えられています。一方で、「一週間以内に東京直下でマグニチュード6~7の地震が発生する」といった詳細で確度の高い予測は、科学的には極めて困難です。
動植物の異常行動や、いわゆる「地震雲」などが地震の前兆現象として注目されることもありますが、それらには科学的な裏付けがありません。動植物の異常行動は他の環境要因による場合も多く、地震雲についても大気現象と地震現象が関連するメカニズムは解明されていません。
さらに、日本では年間2,000回程度の有感地震が観測され、震度4以上の地震も年間約50回発生しています。このように、地震は頻繁に起きる現象であり、その中で特定の予兆を確実に識別することは非常に難しいのが現状です。
参考:地震予知について|気象庁
発生が予想されている大地震とその被害想定
地震の短期的な予測・予知は難しいものの発生周期から予想されている大地震はあります。
それは「南海トラフ地震」「首都直下地震」「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」「中部圏・近畿圏直下地震」です。
それらの詳細や被害想定について解説します。
南海トラフ地震
南海トラフとは、駿河湾から遠州灘、紀伊半島沖、土佐湾を経て日向灘沖まで広がる、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底の溝状地形を指します。この地域では、海側のフィリピン海プレートが陸側のユーラシアプレートの下に沈み込む際に蓄積されるひずみにより、周期的に大規模な地震が発生しています。そのような地震を総称して「南海トラフ地震」と呼びます。
南海トラフ地震は概ね100~150年周期で発生しており、過去には1707年の宝永地震、1854年の安政東海地震と安政南海地震、1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震などが記録されています。
それらの地震は同時発生や時間差での発生など、いくつかのケースがあり、隣接する震源域で地震が連鎖的に発生することもあります。前回の地震から70年以上が経過している現在では、次の南海トラフ地震の発生が懸念されています。
【被害想定】
南海トラフ巨大地震が発生した場合、静岡県から宮崎県にかけての地域では最大震度7の揺れが予想され、隣接地域でも震度6強から6弱の強い揺れが想定されています。また、太平洋沿岸では10mを超える津波が襲来する可能性があり、広範囲で甚大な被害が予測されています。特に津波が沿岸部の住民やインフラに深刻な影響を及ぼすと考えられています。
被害規模の想定では、最大で約32万人の死者、約238万棟の建物全壊が予測されており、停電は約2,710万軒、通信不通回線は約930万回線に達する可能性があります。また、避難者数は約950万人、3日間で最大3,200万食の食糧不足が発生すると予想されています。経済的損失については、資産損害約169.5兆円、経済活動の損失約44.7兆円と試算されています。
首都直下地震
東京を中心とした首都圏直下で発生が想定される地震の総称で、マグニチュード7クラスの直下型地震や、フィリピン海プレートと北米プレートの境界で発生するマグニチュード8クラスの地震が含まれます。地震の震源が浅いため、直上では非常に強い揺れが発生し、住宅地を直撃することで甚大な被害をもたらすと考えられています。
南関東地域でのマグニチュード7クラスの地震発生確率は30年以内に約70%とされており、発生が切迫しているといわれています。
首都直下地震は、複雑に交差するプレート構造の影響を受け、多様なメカニズムで発生すると考えられています。例えば、東京都心南部直下の地震や、千葉県や埼玉県の地殻内地震、活断層による地震などです。
また、相模トラフ沿いの巨大地震も首都圏に深刻な影響を与える可能性があります。特に、都心南部直下で発生するマグニチュード7.3の地震が防災対策の主眼とされており、その被害想定は深刻です。
【被害想定】
建物の全壊棟数は約17.5万棟、建物倒壊による死者は最大約1.1万人と推定されています。また、建物倒壊に伴う要救助者は約7.2万人、さらに、市街地火災の多発と延焼により、焼失棟数は最大約41.2万棟に及び、建物被害全体では約61万棟の被害が想定されています。火災と倒壊を合わせた死者数は最大で約2.3万人に上る可能性があります。
ライフラインや交通網にも深刻な影響を及ぼし、発災直後には、約半数の地域で停電が発生し、電力供給が1週間以上不安定な状況が続くとされています。交通網は、地下鉄は1週間、私鉄や在来線は1か月程度の復旧期間を要する可能性があり、道路網も瓦礫や放置車両で深刻な交通麻痺が発生すると考えられています。
経済的損失は、建物やインフラの直接被害で約47兆円、生産やサービス低下による間接被害で約48兆円と見積もられ、総額約95兆円に達する可能性があります。
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震
房総半島東方沖から三陸海岸沖、さらに択捉島東方沖まで広がる日本海溝および千島海溝のプレート境界で発生する地震を指します。この地域では、マグニチュード7から8を超える巨大地震や、大きな津波を引き起こす「津波地震」と呼ばれる特殊な地震が繰り返し発生してきました。
過去には、1896年の明治三陸地震や、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震がこの地域で記録されています。
日本海溝・千島海溝周辺では、大規模な地震が発生した数日後にさらに大きな地震が続発する事例が報告されており、後発地震のリスクもあります。
【被害想定】
想定されている死者数は、日本海溝沿いで約19万9千人、千島海溝沿いで約10万人に達すると推計されています。特に「冬の深夜」の発生では、避難開始の遅れや積雪による移動困難が被害を拡大させる要因とされています。また、津波から一時的に逃れても低体温症により命を落とすリスクが高く、対処が必要な低体温症要対処者は、日本海溝で約4万2千人、千島海溝で約2万2千人とされています。
建物の損壊は「冬の夕方」に最も深刻になるとされており、日本海溝沿いでは約22万棟、千島海溝沿いでは約8万4千棟が被害を受ける可能性があります。積雪が建物の損傷を拡大し、火災発生リスクを高めるため、二次的な被害も考慮する必要があります。
経済的な損失は、日本海溝沿いでは約31兆円、千島海溝沿いでは約17兆円と推計されています。これには建物やインフラ施設の復旧・再建費用に加え、生産活動の停滞やサプライチェーンの寸断による影響が含まれています。
中部圏・近畿圏直下地震
中部圏および近畿圏で発生が懸念される直下型地震は、地域内に存在する多くの活断層に由来する地震を指します。この地域には名古屋や京都、大阪、神戸といった大都市が広がり、人口や産業が集中しているため、地震による被害は甚大なものとなることが予想されています。
中部圏・近畿圏は、東南海・南海地震の発生を含め、地震活動が活発化する周期に入ったと考えられており、過去の事例からも直下型地震が増加する傾向が確認されています。この地域で発生し得る直下型地震は多様であり、活断層帯が起因するものだけでなく、地表に断層が現れない地震や都市直下で発生する地震も含まれます。
【大阪府を中心とした場合の被害想定】
大阪府を中心に甚大な被害が想定される上町断層帯の地震では、冬の昼12時に風速15m/sの条件下で、建物全壊棟数約97万棟、死者数は最大約4万2千人に達するとされています。この地域の特性として、軟弱な地盤や老朽木造家屋が密集していることが被害拡大の要因とされています。
経済的な損失は、直接被害額が約61兆円、間接被害額が約13兆円にのぼるとされており、交通寸断による物流や人流への影響額は約3.4兆円と推計されています。また、ライフライン被害として断水率67%、停電率41%、ガス供給停止率82%などが想定されており、復旧には相当な時間が必要とされます。一日後の避難者数は約550万人と見込まれ、帰宅困難者数も約200万人に達する可能性があります。
【愛知県を中心とした場合の被害想定】
愛知県を中心とした甚大な被害が想定される猿投-高浜断層帯の地震では、冬の昼12時に風速15m/sの条件下で、建物全壊棟数約30万棟、死者数は最大約1万1千人と推計されています。この地域は工業地帯が広がり、交通インフラへの影響が大きいのが特徴です。
経済的な被害は、直接被害額が約24兆円、間接被害額が約8兆円に達し、物流量や人流の影響額は約3.9兆円と推計されています。ライフラインの被害では断水率56%、ガス供給停止率99%が予想されており、避難所生活を余儀なくされる住民は約160万人、帰宅困難者は約96万人と見込まれています。
大地震への備え
ここからは、大地震への備えを「基本的な考え方」「地震が起きる前にできること」「地震が起きた際の行動」に分けて解説していきます。
基本的な考え方
災害への備えにおいては、「自助」「共助」「公助」という3つの柱を基盤とした考え方が重要です。「自助」とは、自分自身や家族の安全を自ら守るための行動を指します。個々人が責任を持って備えを進めることで、緊急時に迅速かつ冷静に対応することができます。
「共助」は、地域や近隣住民同士で協力し合い、互いに支え合う取り組みを意味します。地域社会での結束や連携が強まることで、被害を最小限に抑えることが可能になります。
「公助」は、行政や公的機関が果たす支援や救援活動を指します。公助は広範囲にわたる大規模な支援を行う一方で、初動の対応が遅れる可能性もあるため、他の柱との連携が求められます。
このように、自助を基盤に据え、共助と公助が相互に補完し合うことで、より強固で効果的な防災体制を築くことができます。
地震が起きる前にできること
自助の一環として地震が発生する前に様々な取り組みをすることは、被害を最小限に抑えるために非常に重要です。まず、家具や家電の固定を行い、転倒や落下を防ぐことで安全を確保します。
特に寝室やリビングなど人が長時間過ごす場所では、家具の配置を見直し、避難経路を塞がないようにしましょう。また、住宅の耐震性能の向上も欠かせません。必要に応じて補強工事を検討することが重要です。
さらに、非常時に備えた非常持ち出し袋の準備も欠かせません。飲料水や非常食、懐中電灯、スマートフォンの充電器、常備薬など、最低限必要な物資を揃え、定期的に点検しておくことが推奨されます。また、家族や職場での避難計画を立て、災害時の連絡手段や集合場所を確認しておくことも大切です。
加えて、地域の防災訓練に参加することで、自分がどのように行動すべきかを具体的に学べ
ます。地震発生後の混乱を避けるためには、事前の備えと心構えが鍵となります。
地震が起きた際の行動
地震が発生した際には、冷静に行動することが何より大切になります。まず、揺れを感じたら落ち着いて身を守るための行動を取りましょう。室内にいる場合は、頭を保護しながらテーブルや机の下に潜り、揺れが収まるまでじっと待ちます。窓ガラスや倒れる可能性のある家具から離れることが重要です。
屋外にいる場合は、周囲を確認して建物や電柱など倒壊の危険があるものから離れ、広い場所に移動します。車を運転中の場合は、慌てず徐々に速度を落として路肩に停車し、エンジンを切って揺れが収まるのを待ちましょう。
また、揺れが収まった後には火元を確認し、火災が発生している場合には消火を試みますが、自分の安全を最優先に行動しましょう。避難が必要な場合は、あらかじめ決めておいた避難場所に向かいますが、余震や道路の状況に注意しながら行動します。
正確な情報を得るためにラジオやスマートフォンを活用し、公的機関からの指示に従いましょう。事前の知識と備えが冷静な判断を可能にします。
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発生が予想されている大地震について
今回の記事では、地震の予知・予測についてや、発生が予想されている大地震の詳細と被害想定を中心に解説しました。
発生が予想されている南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺の地震、中部圏・近畿圏直下地震など、それぞれの地震が引き起こす可能性のある甚大な被害を再認識し、日頃の備えの重要性を確認いただけたと思います。
また、自助・共助・公助を柱とした地震への備えや、具体的な対策についても触れました。災害時の被害を軽減するためには、日頃からの備えが欠かせません。
当社アイディールブレーンでは、独自技術で開発した防災製品を多数提供しています。たとえば、家具や家電の転倒を防止する「ガムロック」や、住宅向けの制震ダンパー「制震テープ」「ミューダム」「ディーエスダンパー」など、地震被害を軽減し、安全性を高めるための製品がございます。
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